カーテンを引っ張りながら

いとこと一緒に田舎に泊まりに行きたいと言われた時は正直驚いた。末っ子の甘ったれで、何時までたってもママと一緒が一番のオチビちゃんだと思っていたのに、家族と離れて一人で泊まりに行きたいなんて……。「本当に?大丈夫なの?」

母の驚いた顔に少々たじろいだのか、カーテンをもじもじと引っ張りながら、それでもこっくりと頷いた。へええ。この子がねえ。「大丈夫よ。私がちゃんと迎えに来るし、帰りもここまで送ってくるから。」妹の言葉に背中を押されて末っ子の冒険が始まった。

「人生二度目の家族と離れてのお泊りですけど、自信はあるのかしら?!」なんといっても、幼稚園のお泊り遠足ではバスでサヨナラまでは勢いが良かったものの、しっかり夜には熱を出しイベントも全部ボイコット。

次の日のハイキングもちゃっかり医務室で重病人のごとく眉間に縦ジワ青息吐息、付き添ってくれた先生を独り占めして、結局最後は準備の先生方のバンに乗り込み、他の園児の皆さんよりひと足早いご帰還だった。

「そんな前のこと持ちださないでよ。」生意気な口調でそっぽを向いた横顔を眺めながら、こうやって子どもって離れていくんだなあと妙に納得した。

「いい天気だね!」起きるなり窓に走り、もどかしげにカーテンを引き開けて私を振り返った顔は、どうも昨日までとは違ってみえた。ちょっと忘れてたけど、子どもって日に日に成長していく生き物だったんだっけ。

ある日突然寝返りをうち、どっこらしょとお座りして母の腕の中から走り去る。「着替えは2枚ずつで大丈夫?パジャマもいるよね。あ、あとは歯ブラシだ!」そうか、末っ子のオチビちゃんと油断してたけど、もう小学生なんだもんね。

お泊りの荷造りまで自分でこなしてしまうとは。あっけに取られる母を尻目に、末っ子のおチビは笑顔でさっさと妹のバンに乗り込んだ。車の中で待ち構えていたいとこ君もとびきりの笑顔を向けてくれる。もう泣いて帰ってくる幼稚園児じゃないんだね。

たった1泊なのに、なんだかすごく遠くに行ってしまったような気がしたけど、いつまでも手を振る姿はやっぱりあの時のチビと一緒だ。ちょっと寂しいけど、ちょっと誇らしい。明日はきっとまた少し大人の顔をして帰ってくるんだろうな。夏休みの最後にいい思い出が出来たね。君も、母も。