TIMEタイム「時間に支配された世界」2012‐03‐05……貴方の寿命が23時間しか残っていない事を貴方が知った時、貴方はどんな事をするでしょう? 普通ならショックのあまり何もできないでしょうし、残された時間の短さをうらやむに違いありません。ところが自身の寿命を救う方法がたった一つあります。寿命は時間を買えば伸びるのです。
さて、この様な状況にあなたが置かれたと仮定したら何をします?
普通の人なら「死」が怖いから時間を買う為に仕事をします。
言い換えると労働=お金ではなくて自分自身の寿命であり、自分に残された時間を使う事により人間らしい生活を営むことが出来ます。
もちろん、映画の世界ですから架空の物語です。ですが本当にこの世の経済活動が、社会に生きる人の残された時間で決まるとしたら、とても怖い事だと思いませんか? さて映画、TIME「タイム」は息子と母親との会話から始まります。元々は無理のある設定で物語が進行しますので、観客の心をつかむために苦心した演出が光ります。例えば人間は25歳になると残された寿命のカウントダウンが始まる事に成っています。
また、25歳以降は年齢が増えない。つまり生き延びることが出来た人間は何年生きても外見は25歳のままです。だから母親の実年齢は50歳、息子の年齢は28歳、なのに外見は25歳だから、見方によっては恋人同士(夫婦)が同棲しているような場面から始まる。それを親子である、と観客に認識させるために様々な手法を使う。
ともすれば、過剰演出に陥り、駄作と成り得る場面だけに、苦心したのだろう。違和感を覚えることなくTIMEの世界に入り込むことが出来た。このあたりに評価が集まりgoo映画2/28付の順位は第二位にランキングされていた。
ストーリーそのものは単純である。恋に落ちた男女が「悪の手先」から逃げ回るという設定で、このあたりは無難にこなしていると感じた。もちろんTIMEという設定がある以上、演出も複雑で例えば「時間」が現在の「貨幣」と同等であるから銀行が扱うものも「時間」であり、金貸しは「貸す時間」に対して利子をつける。借りる立場の人間も利息を含めて返さないといけない。
悪徳業者は高金利で時間を貸し出し、その金利で企業は大きくなる。企業の幹部クラス、経営者は富裕ゾーンと呼ばれる地区で生活を営み、一般労働者はスラムゾーンに追いやられて時間に追われながら単純作業の仕事をこなす。そのスラムゾーンに住む一人の青年がある日、富裕ゾーンから来たある人物から116年分の時間を受け取る。
このことが発端と成り時間を監視する人物(警察と言った方が分かり易いだろう)に追われる事となるが、青年は捕まる前に116年分の時間を利用して富裕ゾーンに紛れ込む。そして一人の女性と知り合い「悪の手先」から逃げ回る事に成る。文字として表現すればたったのこれだけだが、実際には2時間弱の間、目まぐるしく変化するストーリーに目は釘付けになるだろう。
ただ残念な事に「なぜ時間が貨幣と同じ意味を持つ」事に成ったのか? このあたりの真相が知りたかった。というのも映画の中では真相を追求するような伏線がいくつも含まれている。だが結末に至るまでその伏線が効果を発揮したとは思えなかった。せっかく伏線を物語に埋め込んだのだからもっと上手な脚本が書けたのではないだろうか?