
映画を楽しむ上で大事なファクターは多々ありますが、その中でも「音」は非常に大切なアイテムだと思います。実際に「ドクタースリープ…DOCTOR SLEEP」を見れば気付かれると思いますが、作品の冒頭では耳障りに感じていた「ある音」がこの作品には欠かせない要素になっていると気付きました。
無論、その音に気づかれなくても物語を楽しむことは出来ますので、見る前から神経質になる必要は無く、ある音に気付かれた人だけが、その音が持つ効果を推測し、大事な場面でどのように使われるのか、脳の片隅で確認されるとまた違った楽しみが湧くと思います。
ところで映画で音と言えば普通は「音楽」がメインになると思いますがこの物語の中で音楽が流れていたのか、私の記憶の中にありません。本当に音楽が使われていなかったのか、それとも単純に気付かなかっただけなのか? そのぐらい作品に夢中になっていた証拠かもしれません。
さて私は普段、サスペンス系ホラー映画は見ませんが今回は妻のお誘いがあって「ドクタースリープ」を楽しんできました。と言うよりも「ドクタースリープ」の内容は全く聞かずに鑑賞を決めたわけで、サスペンス系ホラー映画とは全く知らず、道中の列車内で「シャイニング」の後編だと聞かされました。
ちなみに「ドクタースリープ…DOCTOR SLEEP」というタイトルと本編の関係性は非常に薄いと感じました。タイトルからは映画の内容は推測できないと思います。主人公に付けられたあだ名がドクタースリープと言う、大した意味はないと思います。
話は戻って「ドクタースリープ」はサスペンス系ホラー映画と紹介しましたが、最近の映画はジャンルを超えて様々な内容で制作されるので一概にホラー映画とかサスペンス映画とは言い切れない部分が多々あると思いますが、恐怖を覚えるという意味では興味をひかれる場面があります。
作品のストリーについては多くの方が語っていますので、個人的には作品の裏側にある「筆者」の狙い、あるいは「映画監督」の狙いについて推測してみたいと思います。ちなみにこの映画の原作は「スティーブンキング氏」が書いた小説ですが読んでいません。
この物語の裏側にあるテーマは「死…death」だと感じました。映画を見れば分かりますが「殺人…murder」をテーマにしてあるように見えますが、殺人ではなく人間に与えられた運命「寿命」つまり死を裏テーマに設定し、死に対する「恐怖」を観客に覚えさせようとしている。
そんな印象を私は感じました。普段考える機会があることは滅多にありませんが、全ての人間の未来には「死…death」が待っています。そのことを恐怖と感じるのか、それとも「運命」と割り切れるのか? さすがに個人々の感情ですので断言はできませんが「怖い」と感じる方が普通でしょう。
その恐怖を上手に生かしてこの映画は作られていると思いますが、個人的に残念に思ったことが二つあります。
一つ目は、この物語の前作とされている「シャイニング」を見ていないという点です。前作のシャイニングから40年の時が過ぎて今回の話につながるという設定ですが、前作を知らない私は「シャイニングを見てから鑑賞に来れば良かった」と、映画館でドクタースリープを鑑賞中に思ったぐらいです。
前回の作品ではどのような設定で物語が進行していたのだろうか? 大した問題ではないと当初は判断していましたが、物語が進行するにつれてこの思いは強くなりました。今の時代ですから過去の作品はレンタルショップに行けば簡単に見ることができます。
二つ目は凝り過ぎている場面が「垣間見える」と感じた点です。今の時代ですから動画を加工することは簡単にできます。ですが、その便利さゆえについ「作り過ぎる事」があるのでは? と思います。違和感を覚えた時点で物語に対する興味が薄れます。
この辺りは様々な人が鑑賞する物語なので個々の趣向に合わせる事は限界があると思いますが、やり過ぎには気を付けて欲しいと思います。
最後に映画「ドクタースリープ」を楽しみたいと計画されている方への私からの提案です。将来的にはテレビ番組として放送、あるいはレンタル等をされて楽しみたいと思われる方もいるでしょう、その時には時間軸を意識しながら鑑賞してください。
最近の映画は「レメイク」された作品もありますし昔の映画の続編を作る場合もあります。この場合、昔の作品を知らない方の為に「昔の事件」を説明する必要が有ります。その反面「見たことがある」人の事を意識する必要が有ります。
この矛盾する、複数の人を満足させるためには「ある程度の時間を無視する」設定が無ければ物語として成立しません。この時間軸を理解していないと「昔の話」なのか「現実の話」なのか、頭の中が混乱する原因となります。
今見ている場面は「主人公が思い返す昔の記憶」なのか、それとも「今現実の世界で起こっている出来事」なのか、そのあたりを頭の隅で整理しながら楽しまれると大変面白く鑑賞できると思います。PG12指定です、児童の方(12歳以下)は見ることができません。
個人的な評価は☆4つ、動画のある部分を作り過ぎた感が残ったので一個マイナスとしました。